当初、TEX-MEXは「アメリカナイズドされ、ファースト・フード化されたジャンク・フードである」と紹介されたこともありましたが、これは大きな誤りで、アステカ系先住民の食文化に、スペインのみならず、フランス、イタリア、ドイツ、アイルランド、スコットランドなど、ヨーロッパの食文化が融合して、数百年の歳月の中で発展した伝統ある食文化であると近年では評価が改められています。

 

元来、ヨーロッパからアメリカ大陸への航路は、スペイン人が胡椒をもとめてインドへ航海した際に発見されました。

 

しかし、アメリカ大陸に胡椒はなく、誤ってインディアンやインディオと呼ばれた先住民の食事に胡椒は使われていませんでした。

 

そのため、数百種に及ぶともいわれるチレ(唐辛子)を使い分ける伝統的メキシコ料理に胡椒がつかわれることは、今日でもほとんどありません。

 

後に発展したTEX-MEX料理でも数種類のチレを使い分けて味付けがなされますが、TEX-MEX料理において、より特徴的なのは、ベルベル系フランス人が、アフリカ、中近東、アジアなどからもたらしたクミン・シード、コリアンダーをはじめとする様々な種類のスパイスやハーブをチレとともに組み合わせて使用することといえます。 

 

数百種に及ぶとされるメキシカン・チレ
数百種に及ぶとされるメキシカン・チレ。生、乾燥、燻製などで用途や味が異なる。

 

テキサス以東のルイジアナ州では、フランスやアフリカの影響がより濃くあらわれた文化となっており、これらはCajan (ケイジャン)料理と呼ばれ、TEX-MEXとは区別されるのが一般的ですが、起源は同様で、先住民の食生活にアカーディア人、ベルベル人などの移民文化が融合して彼らの生活に根差した食文化となっています。

 

ケイジャン料理
ケイジャン料理 左からジャンバラヤ、ガンボスープ、ケイジャンチキン

 

アメリカ大陸に胡椒はありませんでしたが、北米(主に現在のメキシコ)原産とされるトマト、そしてフリホーレスと呼ばれるキドニー・ビーンズ(インゲン豆)は、瞬く間に世界中の食卓に広まりました。

 

これらに加え、ヨーロッパから伝搬したチーズと、さらに地中海沿岸原産のレタスなどが、今日のTEX-MEX料理に欠かせない食材となっています。

 

TEX-MEXを象徴する料理のひとつとしてチレ・コン・カルネ(Chile con Carne / チリ・コン・カーンはスペイン語の英語読み)があります。

 

これもまた、モロッコやカナリア諸島から渡って来たベルベル人の移民文化に影響された料理ですが、現在では西部開拓時代にテキサスで生まれたこのチレ・コン・カルネを代表的なメキシコ料理だと信じている方も少なくありません。 

 

当初はチレと牛肉だけを煮込んだものだったといわれてますが、これにキドニー・ビーンズと様々なスパイスが加えられ、今日の形になったこの料理には、チリ・ビーンズと肉のみを水分がほとんどなくなるまで煮込む南東部スタイルと、トマト、タマネギなどの野菜を一緒に煮込んだスープのような西海岸スタイルがあり、さらにアメリカ全土で各家庭によって様々な味とスタイルがあります。  

 
フリフォーレスとチレ・コン・カルネ
フリフォーレスことキドニー・ビーンズ(インゲン豆)とチレ・コン・カルネ

 

またテキサスのタコスといえば、コーントルティーアを使用したものが一般的ですが、イーストL.A.やサンフランシスコなどカリフォルニアの大都市で発展した西海岸スタイルのTEX-MEXでは、フラワートルティーアの素焼きを使ったソフトタコスが主流で、現在では、逆輸入的にテキサスやメキシコでもフラワートルティーアが市民権を得ています。

 

また多くの日本人が「タコス」と言って想像する二つ折りのハード・シェル状のものは、トルティーアをフライにしたトスターダというものが原型でメキシコではなく主にアメリカ中西部から広まったものです。

 

ハード・タコスと・ソフト・タコス
コーン・ハード・シェル・タコス(左) フラワー・ソフト・タコス(右)

 

また、フリホーレスとトルティーアが主食であるTEX-MEXでは、ライスはサラダとして位置づけられるのですが、日本でお馴染みのタコライスは、Taco Salad(タコ・サラダ)やTostada Salad(トスターダ・サラダ)と呼ばれるTEX-MEX料理が沖縄でアレンジされたものです。

 

今日のTEX-MEXは、地域や時代の違いのみならず、各家庭によっても様々なレシピが存在しており、異文化の交流と融合に基づいた自由な発想が楽しめる食文化といえます。

 

 

このようにアメリカ全域の食文化のみならず、世界の食文化に多大な影響を及ぼしたメキシコ料理は、2010年、ユネスコにより世界無形文化遺産に登録されました。

 

その際、当店は、メキシコの伝統を継承しつつ発展した本格的TEX-MEXを日本で味わえる数少ない専門店として、在日メキシコ大使館より公認を受けました。

 

当店のメニューは、サンタフェ(ニューメキシコ州)でTEX-MEXに出会った店主が、サンノゼ(カリフォルニア州)出身のアメリカ人のもとで修業したもので、様々なスタイルのTEX-MEXの中でも、比較的ライトですが、栄養バランスのよいスタイルを中心にしております。

 

国境や人種、国家、時代を超え、北米全域から世界に広まっている“ホンモノで美味しいTEX-MEX”を、是非、El Caféでご体感ください。

 

What's about TEX-MEX?

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